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2025年1月23日

生活必需品セクターのケース

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生活必需品セクターのケース


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生活必需品セクターのケース

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2025年1月23日

 
 

本稿の執筆時点において、生活必需品セクターは人気がなく、少し見過ごされているようです。コロナのパンデミックが収束した2022年以降、このセクターの利益は年率1桁台半ば1で成長しており、株式市場全体の利益成長に近いものですが、株価はアンダーパフォームしています。

 
 
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この4年間は例外的な大変動の年でしたが、生活必需品セクターはレジリエンス(強靭性・回復力)を示しており、私たちのポートフォリオから投資する正当な理由があります。
 
 
 

明らかな事では、MSCIワールド指数と比較すると、生活必需品セクターは、相対的な株価バリュエーションが25年ぶりの低水準にあり、MSCIワールド指数に占めるウェイトも、21世紀に入って以来の最低レベルになっています。2対照的に、投資家の関心は生成AI、グローバル・メガテクノロジー、肥満対策を目的としたヘルスケア・イノベーションなど、もっと時流に乗ったセクターや投資テーマに移っています。このような傾向にもかかわらず、私たちは、生活必需品セクターには依然として世界で最もレジリエンスがあり、信頼できる企業が存在していると考えています。

高クオリティ企業の特徴

生活必需品セクターの高クオリティ企業は、日常的な需要がある商品から発生する経常的な利益を原動力として、一貫して信頼性の高い成長を実現しており、私たちのポートフォリオにおいて、重要な役割を果たすことが可能です。景気後退期においても、高クオリティ企業が典型的に示す業務・業績のレジリエンスは、株価の相対的な下値抵抗力を提供し、ポートフォリオの安定化要因として機能するなど、重要なアドバンテージを発揮します。

試練の時期

最近の生活必需品セクターの一部の銘柄の株価は、期待に反した動きをしていますが、過去4年間このセクターは、コロナのパンデミック、原材料コストの高騰、数々のエマージング市場の通貨切り下げ等を乗り越え、見事なレジリエンスを示してきました。このような困難な状況にもかかわらず、私たちが保有している企業の米ドル建ての売上高と利益は1桁台半ばの水準3で成長しており、レジリエンスと複利的増益の可能性を裏付けています。

適切な業種カテゴリーの適切な企業

投資家として、私たちは最初にセクター毎に資金を配分するのではなく、強靭なファンダメンタルズと長期的な成長ポテンシャルを持ち、株価が合理的に評価されている企業について、個別にフォーカスしています。もちろん、すべての生活必需品セクターの企業が、このプロファイルに当てはまるわけではありません。私たちの見方では、企業は、ブランド力が重要なカテゴリーで、消費者がイノベーションに反応するような、適切なカテゴリーにいることが鍵になります。つまり、企業はマーケティング、研究開発(R&D)、サプライ・チェーンの組織力、人材といった形で、自社のブランドへ高水準の投資を続けることが必要であり、重要なのです。

その好例が、英国を拠点とするコンシューマー・ヘルス分野のグローバル・リーダーです。この企業は、最近私たちが投資し始めた企業です。この企業は、5つのカテゴリーにわたり9つの強力なブランドを展開し、消費者の重要なニーズに対応しています。-「知覚過敏用の歯磨き粉」はその一例です。治療用のオーラルケア・カテゴリーにおいて、同社の優位性は、1,000万人の医療従事者4の3分の1と直接的な関係があり、信頼できるインフルエンサーであるという事に支えられています。こうしたパートナーシップは、消費者の獲得と維持を促進する上で重要な役割を果たしており、結果として、ブランドへの強い忠誠心、業界をリードする利益率、景気循環に左右されない成長をもたらしています。

イノベーションを追求し、時代に適応し続けることが重要

私たちが保有している企業は、美容、ホームケア、コンシューマー・ヘルス、飲料の各分野において、消費者のニーズを解決している革新的な企業ばかりです。消費者のニーズを解決することにより、消費者の利用が拡大し、その分野の成長が促進されています。このイノベーションは、エネルギー効率の高い洗濯用洗剤から、改善された知覚過敏用歯磨き粉、「nolo」(ノンアルコールまたは低アルコール)飲料や糖分ゼロ飲料、即効性のある制酸剤、肌を保護するための改良されたサンフィルター技術に至るまで、多岐にわたっています。

これらのイノベーションは、十分に投資されたサプライ・チェーンと高レベルのマーケティング支援によって支えられています。つまり、メディア露出度(Share of Voice, SOV)はマーケットシェア以上でしょう。このようにして、私たちが保有している企業は市場の成長率を凌駕し、シェアを拡大しているのです。一方で私たちは、食品小売業者と大量生産型の食品メーカーを避けています。食品小売業者は、通常、利益率が低く、資本集約的で、安値競争型です。ある有名な食品小売業者が成功しているのは、まさに大量販売、低マージンのビジネスを展開しているからです。また、大量生産型の食品メーカーは、その競争力のある参入障壁が、地元メーカーや、専門メーカーによる脅威に直面する可能性があります。

マーケティングについて

私たちは、保有企業の投資が不足であると判断した場合には、投資を実行することを要求します。例えば、私たちは、マーケティング費用を削減していた世界的なビール会社の株式を売却しました。費用削減により、短期的には利益が上がるかもしれませんが、長期的にはブランド力を損なう行動であり、そこから回復するのは、困難な場合が多いのです。逆に、売上高の30%以上をマーケティング費用に充てている美容業界の世界的なリーダー企業の株式を買い増しました。マーケティングへの投資により、同社は市場シェアの1.5倍のメディア露出度を記録し、常に市場を上回る業績を上げています。5

 

成長のあるところに軸足を移す

経営のアジリティ(敏捷性)は、私たちが生活必需品セクターの銘柄を選定する際に求める重要な特性です。経済的、地政学的に不透明な世界では、グローバルな事業を率いる経営陣が、資本、人材、マーケティングなどの経営資源を、最も有望な市場に、迅速に配分する能力が重要だからです。中国では地方政府の債務増加、住宅市場の低迷、デフレ、慎重な消費者など経済問題が、今まで急成長していた中国市場に著しい減速をもたらしています。最近の大規模な景気刺激策は、一助になるかもしれませんが、同時に政策立案者の成長見通しに対する懸念が浮き彫りにされています。幸いなことに、約14億人の消費者を抱えるもうひとつの市場が、成長の担い手になろうとしています。

私たちは、次の偉大な希望と言われてきたインド市場が、いよいよ勃興のサインを示していると考えています。道路から電力、デジタル化まで、インフラへの投資が国内総生産と消費の力強い成長に貢献しています。私たちが保有している飲料会社は、インドの潜在的な成長機会を捉えるため、2024年に40の新しい生産ラインへの設備投資を進めています。6

蒸留酒業界は、最近課題に直面

コロナによる自宅でのカクテル・ブームの後、米国市場の正常化と、中国市場の遅い消費回復が、2024年の蒸留酒業界の売上と利益成長に悪影響を与えています。消費量の減速に加えて、販売業者の在庫調整によって、売上はさらに悪化しています。私たちは、こうした問題は業界の構造的なものというよりも、むしろ景気循環的なものと考えています。また、蒸溜酒業界のバリュエーションは、MSCIワールド株価指数と比較して、歴史的に割安な水準にあり、私たちが保有する蒸溜酒メーカーの1株当たり予想利益と予想株価収益率が谷間の水準からリバウンドすれば、長期投資の目標は報われる可能性が高いと考えています。

生活必需品セクターの銘柄が、今後も複利的な増益を維持できると考える理由

生活必需品セクターは、過去20-30年間で最も厳しい環境に直面した激動の4年間を経て、それでもなお売上高とEPS(1株当たり利益成長率)が1桁台半ばの成長(株式市場のEPS成長率を下回っていますが)7を保ち、レジリエンスを示しています。このような複数の理由から、将来を考えた場合、生活必需品セクターは、私たちのポートフォリオから投資する価値があるものと確信しています。特筆すべきは、私たちが保有している生活必需品セクターの企業は、マーケティング費と研究開発費が記録的な水準に達しており8、今後の業績は業界を上回る可能性があることです。

さらに、自動化、ERP(Enterprise Resource Planning、経営資源計画)システムのアップグレード、デジタル化、生成AIへの投資による効率化も進んでいます。結果として、販売量、価格ミックス、利益率の改善、強力なフリー・キャッシュ・フローがさらにバランスよく組み合わされる事で、利益成長率は1桁台後半に回復すると予想しています。そして、市場保有銘柄の株価も魅力的な水準にあります。私たちの保有銘柄は、一般的な成長市場と比較すると、まだ過去20年間の平均水準のバリュエーション株価でしかで取引されていないますが、株式市場は概して割高です。

 
 

1 出所:FactSet、2024年9月現在

2 出所:FactSet、2024年9月現在。MSCI World Index

3 出所:FactSet、2024年9月現在

4 出所:インターナショナル株式運用チームによる調査

5 出所:Company reports; インターナショナル株式運用チームによる調査

6 出所:Company reports; インターナショナル株式運用チームによる調査

7 出所:FactSet、2024年9月現在

8 出所:Company reports; インターナショナル株式運用チームによる調査

 
nic.sochovsky
マネージング・ディレクター
インターナショナル株式運用チーム
 
 
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本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。

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50億円超100億円までの部分に対して           0.756%(税抜 0.700%)
100億円を超える部分に対して     0.702%(税抜 0.650%)
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- 投資信託財産に係る監査報酬
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