リサーチ・レポート
ニッチ企業 : 道なき道を探す
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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2024年11月28日
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2024年11月28日
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ニッチ企業 : 道なき道を探す |
人員が充実した運用チームで企業のファンダメンタルズ・リサーチを行う利点の一つは、投資候補企業について幅広く、隅々まで調査が可能になることです。私たちが保有する企業の多くは、すでに事業が確立し、世の中にブランドが浸透している大企業ではありますが、私たちの経験からすると、優れた企業や投資機会の発掘は、専門的なニッチ市場に特化した企業を探すことによっても、可能です。このような企業は、業界において重要な役割を果たし、緊密な顧客関係から利益を享受しています。もったいないことに、さほど驚くことではありませんが、これら企業は株式市場の脚光を浴びることはあまりなく、証券会社のリサーチから外れています。
ニッチ企業の強み
我々が意図するニッチ市場とは、専門的な市場で、そこでは競合他社が多くないものです(できることなら、ほんの一握り!)。企業にとって、的を絞ったニッチ戦略を成功させる事は、明らかにいくつかのメリットがあります。集中的な市場構造によって、ニッチ企業は、高い利益率を享受できるはずです。従って、長期的に卓越したリターンを獲得できる可能性が高いといえます。
また、ニッチ市場の企業が注力する市場は、絶対的な市場規模が大きくない傾向があるため、厳しい競争リスクも低減できる可能性があります。競合他社からすると、もっと大きく魅力的に見えるビジネス・チャンスは、別の市場にあるからです。その他にも、市場規模が大きくないことの利点として、独占禁止法上の懸念が少ない傾向があります。しかし、ほぼ間違いなく最も重要な点は、成功したニッチ企業は、おそらく、売上高ではなく、利益や投資リターンにフォーカスした企業文化を持つ企業であるということです。ニッチ企業は、M&A(合併・買収)についても、焦点を絞った投資戦略を必須としていることが多いといえます。ニッチ企業の性質上、M&A取引は、リスクの高い大型買収や「変革的」買収ではなく、小規模で、事業の「追加的」買収となる傾向があります。買収の根拠は、「財務会計表の上で計算されるEPS(1株当たり利益)が、買収したらどのくらい増加するだろうか?」といった有害な視点からではなく、「なぜこの市場は、長期的な事業展開にとって魅力的なのか?」といった重要な論点に焦点が当てられることが多いのです。
ニッチ企業に向けられる批判として、特に活動市場において占有率が高い場合には、成長する方法がもう無いのではないかという意見があります。しかしながら、私たちが通常目にする現実は、もっと多面的なものです。同業他社は、大きくはあるものの構造的に魅力的と言えない末端市場における事業展開に忙しいため、結果としてニッチ企業が業績的には勝利することがよくあります。また、経営が上手くいっている企業なら、関わっている市場全体を成長させることも可能です。ニッチ企業は強みのある立場で事業を展開して、経営陣は、新しい分野でイノベーションを起こすように投資し、提供する製品の範囲や潜在的な顧客基盤の拡大に注力しています。
成功するニッチ企業
ニッチ企業は、もっと成熟した、競争が厳しい市場規模の大きなセクターでも、質の高い活動市場を形成することが可能です。例えば、投資家の視点から見ると、証券取引所は、金融業界の中でも、素晴らしい豊かな鉱脈を形成しています。証券取引所は、必要不可欠で代替が難しい市場インフラを運営しており、ブランドとネットワーク効果の組み合わせから、一般的に、非常に深い防衛の堀を享受しています。その結果、証券取引所は非常に魅力的な収益性を持ち、高いリターンを実現することが可能です。-証券取引所の仕事は、金融システムの資金移動の配管工ともいえ、特に華やかな仕事ではないかもしれませんが、旨味の有る仕事であることはは間違いないでしょう。
企業にとって、ニッチ企業の利点を理解しておくことにより、事業規模が大きくなっても、継続的に改善を続ける企業文化を根付かせることが可能です。私たちが所有する米国のハイテク企業は、ルーツは工業製品のメーカーですが、現在の売上の内訳は、特定市場向けソフトウェアが約75%、医療・水関連製品が約25%を占めています1。同社は、「競争に対して防御し易いニッチ市場において、マーケットをリードする事業」の運営に注力しています。そして、高い営業資本利益率・収益性・キャッシュ創出、そして景気循環性の顕著な低下が示すように、一貫して、質の高い事業を進めてきました。
ニッチ企業は、その性質上、重要な役割を果たしながらも、あまり目立ないことがしばしばあります。私たちが所有している米国のビジネス・サービス会社は、議決権行使の基盤の提供で優位であり、重要な位置を占めています。同社では、売上に占める継続的な客が過去15年間の平均で98%という極めて高い水準であることが示すように、米国の金融市場に深く入り込んでいます2。私たちは、同社はおそらく、証券レポートから「見過ごされている」と考えています。そして、会社は自らをフィンテック企業とみなし、主に金融関係の顧客にサービスを提供しているにもかかわらず、業種分類は、インダストリアル(資本財)に分類されています。このような事実が、過小評価を助長していることは間違いないでしょう!
複利効果のレシピ
私たちの投資哲学は、業績に回復力があり、複利的に強く増加する見込みがある、高クオリティ企業にフォーカスするものです。魅力的なニッチ市場に注力することで、優れた経営を行う企業は、一貫して高い利益率を維持できるハイリターン・ビジネスを切り開くことが可能です。私たちの経験では、ニッチ市場を理解している経営陣は、同時に、株主資本の優れた管理者であることが多いのです。どのような年であれ、ニッチ企業の業績が驚くほど急伸することはないでしょうが、ニッチ市場を好むことは、強力で安定した長期的な複利的増益のために良いレシピとなるでしょう。
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マネージング・ディレクター
インターナショナル株式運用チーム
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