リサーチ・レポート
果報は寝て待て:長期的な思考に関する考察
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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2023年10月18日
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2023年10月18日
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果報は寝て待て:長期的な思考に関する考察 |
先進国の人々の多くは、欲しいものを、欲しい時にはいつでも、好きなように手に入れることができる、すぐに準備される社会で暮らしています。1回のクリックで食料品店での毎週の買い物を行い、右に1回のスワイプで新たなパートナーを見つけ、2回のタップで地球の裏側へのフライトを予約することができます。多くの意味で、こうした即時性は非常に有益であると言えます:時間を節約し、人々との繋がりを保ち、かつてないほど多くの情報にアクセスすることができます。
こうした即時性により、我々の生活は容易になる一方で、あらゆるものを簡単に手に入れられることに関連してコストが生じます。人間の脳は、幸せホルモンを分泌するドーパミンを欲するようになっています。今日、こうしたドーパミンは、スマートフォンが容易に提供しています。スタンフォード大学で精神医学および行動科学の教授を務めるアンナ・レンブケ博士は、スマートフォンを「24時間365日にわたりデジタル・ドーパミンを供給する現代の皮下注射針」と名付けました。彼女(アンナ・レンブケ博士)のリサーチによると、スマートフォンを経由してアクセス可能なドーパミンを繰り返し注入することで、大脳辺縁系(人間の情動を司る脳の一部)が過剰に使用され、前頭前皮質(衝動抑制、長期的なプランニング、満足感の先送り、といった役割を担っている)の機能が低下します。こうした過剰な刺激により、不安な感情や我慢出来ない感情が生じやすくなる可能性があります。私たちは、本を一冊読み切ることや、新たなスキルを習得すること、または真に長期的な見方に基づいて投資を行うことなど、忍耐や根気を必要とする有意義な追求を行うことを疎かにする場合もあります。これから説明するように、株式投資に関しては、忍耐強い「亀のような行動」が長期的なレースで勝利を収めることを主張したいと思います。
実際に、喜びを先延ばしすることができる能力が、長期的に見て大きな成功につながることを示唆する証拠があります。おそらく、これに関して最もよく知られている事例は、ウォルター・ミッシェルの「マシュマロ実験」です。この実験では、子供たちに1つのマシュマロを与え、最初のマシュマロを食べるのを15分間我慢できれば、2つ目のマシュマロをもらえます1。その後の研究において、衝動抑制を示した子供が後に、試験での高い結果、社会的および認知的機能における優位性や、その他の様々な生活尺度での高いスコアを獲得するといった形で、成功を享受する可能性が高いことが分かりました。
投資という観点では、喜びを先送りにすることは、市場がバブルの幸福感に包まれているときに、その雰囲気に飲み込まれないように衝動を抑えることを意味します。例えば、ITバブルの時に株価が急騰したような投機的な銘柄を避け、代わりに生活必需品セクター(大幅に出遅れていた)をしっかりとオーバーウェイトしたポジションを維持したことが、2000年3月に始まり2002年10月に終わったITバブル崩壊において高いパフォーマンスにつながりました。MSCIワールド・インデックスは、高値から底値までで43%下落した一方で、よりディフェンシブな生活必需品セクターは同じ期間に17%上昇し、MSCIワールド・インデックスをアウトパフォームしました2。今日の人工知能(AI)をめぐる熱狂に対して、一部の投資家がどのような行動を示すかが再び試されることになると思われます。私たちは、収益の頑健性を有する定評のある質の高い企業に注目するとともに、短期的な上昇を追い求めたい衝動を抑えるような規律ある姿勢を維持することにより、歴史的に見て長期的な高い成果を生み出しています。
人は生まれつき「目先」を重要視する傾向がある
人間の心理的素質を踏まえると、人々が短期的なことを好むのは何も驚くことではないと言えます。「現在バイアス」とは、人は目先のメリットやコストをより重要視する一方で、後で生じる利益やコストをあまり重要視しない傾向が強いという広く見られる現象のことです。例えば、現在バイアスを実証している消費者は、過剰な借金、過剰な支出、貯蓄不足など好ましくない金銭的習慣を有している可能性があります3。一方、「近視眼的損失回避」に取りつかれている投資家は、過度に短期的なことに重点を置き、長期的なメリットの可能性をなおざりにして足元の損失にネガティブに反応します4。こうした行動は、長期投資で成功を収めるには逆効果であり、こうしたバイアスに気が付く必要があることを浮き彫りにしています。
長期的な思考を提唱する
すぐにあらゆることを望む社会において、私たちは「すぐにではなく、後でよい」ことの強力な提唱者です。長期にわたり成功するためには、規律と忍耐が必要であり、私たちはこのことを証明することができます。私たちのボトムアップに基づくファンダメンタル重視のクオリティの高いアプローチや、長期的な投資期間、バリュエーション規律は、20年以上にわたり上手くお客様に貢献してきました。長期的な視点には、本能的な「現在バイアス」を抑える能力が必要で、それは私たちのポートフォリオの売買回転率が低い事、銘柄選択においては現時点で高い投下資本利益率を有しているというだけでなく、将来にわたって高い資本利益率を維持できると考えられる企業を発掘することに努めている事、に示されています。
複利効果を生み出せる企業を見極める
私たちのアプローチの中心にあるのは、複利効果の力に対する確固たる信念です。課題は、複利効果が得られる企業を見つけることです。私たちは企業に対して過度な成長を求めることはなく、代わりに何年にもわたり高いリターンを維持することができる着実かつ妥当な成長を期待します。例えば、年4%で利益が成長している企業は、利益率を徐々に改善することで、さらに1%の利益成長を加え、これに約5%のフリーキャッシュフロー利回りを組み合わせると、長期的には10%に近い水準の複利効果が得られると見込まれます。「72の法則」によると、7年ごとに投資元本が倍増することになります5。
複利効果を生み出すことができる高クオリティ企業において中心を成すのは、長期的な視点を有する有能な経営陣です。私たちが投資する優良企業におけるキャッシュを生み出す特性を踏まえると、経営陣は、十分なキャッシュを研究・開発(R&D)や、マーケティング、イノベーションに再投資することで、優位性が妥当で頑健性を維持することを確保し、次に経営陣は、本業以外の買収に係るリターンが、キャッシュを株主に還元するよりも望ましいほど十分に魅力的であることも確認することができる、またそうする必要があると考えられます。最近のグローバル・エクイティ・オブザーバー「買収すべきか、買収すべきでないか?」で詳述したように、私たちは、株主資本の適切な配分としてM&Aに対して健全なレベルでの懐疑的な見方を維持していますが、折に触れて希少な買収者(優良な買収者)を見極めることもあります。
私たちは、短期的な目標を達成することの誘惑に負けて、企業の無形資産を構築し、改善するといった長期的な取り組みをおろそかにしないように経営陣に求めます。重要な指標は役員の報酬です。私たちは定期的に、長期的なインセンティブ・プランに関して経営陣や取締役に対するエンゲージメント活動を行い、インセンティブ・プランを長期的な株主の利益と一致させ、負債を増加させる、または賢明でない買収を行うなど短期的
な戦術を行わないよう促しています。
長期にわたり銘柄を保有し、規律を維持する
長期にわたり投資を保有することにより、損失を被ることの可能性を抑えることができる証拠が存在しています。仮に
1970年~2023年の間にMSCIワールド・インデックスに投資していた場合、1年間の投資期間では、月次リターンの23%がマイナスのリターンとなった一方で、5年間の投資期間では、月次リターンがマイナスになったのは11%に減少し、10年間の投資期間ではわずか3%に過ぎませんでした(図表1)7。また、市場のタイミングを捉えようとすることも無駄な行為であると言えます。バンク・オブ・アメリカのリサーチによると、仮に投資家が1930年以降の各10年間の中でS&P500指数が最も大幅に上昇した10日を逃した場合、トータル・リターンは30%になります。一方、すべての景気サイクルを通じて投資を保有していたとしたら、17,715%のリターンとなります8。私たちがアクティブに運用する集中グローバル・ポートフォリオでは、私たちは自身を保有企業にとっての「貸主」ではなく、長期的なオーナーと見ています。私たちは持続力があり、複利効果の得られる企業を探しており、このことがポートフォリオの約20%という(低い)年間売買回転率をもたらしています。最も長い歴史のあるフラッグシップ戦略の現在の保有銘柄を見ると、ポートフォリオの3分の1程度が10年以上にわたり保有されており、約3分の2は5年以上にわたり保有されています。
長期的な投資テーマに注目し、短期的な市場のノイズを避けようとしていることを示す事例について、ソフトウェア銘柄の保有の1つで説明することができます。この企業は2020年、予想されていたよりも早くクラウド事業に方向転換しました。市場は当初、この判断を支持せず、株価は25%下落しました。市場の反応にもかかわらず、私たちはこうした戦略的動きを支持し、ポートフォリオでこの銘柄を買い増し、上位10の保有銘柄として保有を続けました。それ以降、私たちのこうした長期的スタンスは収益を生み出しており、この会社は過去12ヵ月において絶対パフォーマンスで最高のプラス寄与銘柄となっています。また、売却の判断においてもこの規律を適用しています。例えば私たちは、中国の経済活動再開への期待感から、世界的な美容会社が大幅に反発したことを受け、バリュエーションが割高となったため、この銘柄を売却しました。私たちのアナリストが、同社の収益見込みが完全にバリュエーションに織り込まれたと示唆したため、売却の絶好の機会と判断しました。
投資で成功を収める上で重要な教訓とは?
現在の社会は、短期的な衝動や、目先の対価にとらわれているかもしれませんが、投資に関して言えば、忍耐強い姿勢が永続的な結果や、長期的にプラスの投資成果をもたらすと考えています。20年以上にわたり、私たちのチームの投資アプローチでは、複利効果が得られる可能性のある高クオリティの企業を見極め、それらの企業が成果を出すための時間を与えるように十分に忍耐強くなることに、重点を置いています。私たちは、企業のクオリティに関するファンダメンタルズや、堅固な参入障壁を精査します。そして、短期的な戦術をとることが長期的な複利効果を得る上で逆効果となることを知っています。私たちは、短期的に市場をアウトパフォームすることを目指す「ウサギのような行動」ではなく、着実に複利効果を積み上げる「亀のような行動」を選好します。
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インターナショナル・エクイティ運用チーム責任者
インターナショナル株式運用チーム
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Annabel Stanford
アナリスト
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本書は、インターナショナル・エクイティ運用チームが作成したレポートを、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社が翻訳したものです。本書と原文(英語版)の内容に相違がある場合には、原文が優先します。
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受託資産の運用には、受託資産に組入れられた株式その他の有価証券等の価格変動リスク、株式その他の有価証券等の発行体の信用リスク及び株式その他有価証券等を売却あるいは取得する際に市場に十分な需要や供給がないため、十分な流動性の下で取引を行えない、または取引が不可能となる流動性リスク等による影響を受けます。また、外貨建て資産に投資するため為替変動リスクの影響を受けます。受託資産の運用による損益はすべてお客様に帰属し、元本が保証されているものではなく、元本損失が生ずることとなるおそれがあります。
3. 投資一任契約締結に際しての留意事項
受託資産の運用は、個別の受託資産ごとに投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、投資一任契約を締結する際には、契約締結前交付書面をよくご覧ください。
リスクについて
当運用戦略は主に海外の有価証券等を投資対象とするため、当該有価証券の価格の下落により投資元本を割り込むことがあります。また、外貨建ての資産は為替変動による影響も受けます。従って、お客様の投資元本は保証されているものではなく、運用の結果生じた利益及び損失はお客様に帰属します。投資する可能性のある金融商品等には、価格変動リスク、信用リスク、流動性リスク、為替変動リスク、デリバティブ取引に伴うリスク、カントリーリスク等のリスクを伴います。
費用について
投資一任契約に基づいて直接投資をする場合の費用
投資顧問料率
25億円までの部分に対して 0.864%(税抜 0.800%)
25億円超50億円までの部分に対して 0.810%(税抜 0.750%)
50億円超100億円までの部分に対して 0.756%(税抜 0.700%)
100億円を超える部分に対して 0.702%(税抜 0.650%)
※ 表記の料率は年率表示です
※ 上記以外に投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の報酬体系は上記と異なる場合があります
※ 契約資産の性質・運用方法等により、お客様と協議の上、最低受託額、受託額及び投資顧問料率を別途取り決めることがあります
※ 税込料率は法律に定められる税率が適用されます
また、投資一任契約に基づく組入資産の売買手数料、保管費用等をお客様にご負担いただきます。(当該手数料等につきましては、運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません。)
最低受託金額
効率的な運用を実現するという観点から、個別口座の最低受託金額を50億円と設定しております。
《ご注意》
上記に記載している費用項目につきましては、一般的な投資一任契約を想定しております。受託資産の運用に係るリスクや費用については、投資一任契約を締結する際に、事前に契約締結前書面をご覧ください。
投資一任契約に基づいて投資信託に投資する場合の費用
組入れ予定の投資信託は、弊社がお客様と締結する投資一任契約に基づいて投資を行うための専用ファンドであり、当該目的での利用に限定しております。
投資顧問料率
一律0.81%(税抜0.75%)
組入れる投資信託で弊社が運用報酬を受領する場合、上記料率から控除して投資顧問報酬額を算出します。
• 組入れ予定の弊社設定投資信託から弊社が受領する運用報酬はございません。したがって、投資顧問報酬額は上記の年率0.75%(税抜)で計算されます。
• 表記の料率は年率表示です。
• 契約資産の性質・運用手法等により、お客様と協議の上、別途報酬額を取り決める場合があります。
• 税込料率は法律に定められる税率が適用されます。
投資信託にかかる費用
信託報酬 年率0.054%(税抜 年率0.05%)内、委託者報酬(運用報酬) ありません
信託財産留保(相当)額 基準価額に0.20%を乗じた額(解約時)
• 販売手数料はございません
• 当該投資信託に関する以下のその他の費用を、投資信託財産で間接的にご負担いただきます
- 組入有価証券を売買する際に生じる取引費用
- 外貨建資産の保管費用
- 信託事務の処理に要する諸費用
- 受託会社の立替えた立替金の利息
- 投資信託財産に関する租税
- 投資信託財産に係る監査報酬
- 法律顧問に対する報酬
- 投資信託約款および受益者に対する報告書の作成、印刷および交付に係る費用
- 公告および投資信託約款の変更および解約に関する書面の作成、印刷および交付に係る費用
- 投資信託振替制度に係る手数料および費用等
(上記その他の費用については、当該投資信託の運用状況等により変動するため、事前に料率やその上限額等を表示することができません)
上記投資顧問報酬(0.75%)と上記投資信託の信託報酬(0.05%)の合計は、0.80%(年率、税抜)となります。