リサーチ・レポート
クオリティ銘柄は長期保有が肝要
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グローバル・エクイティ・オブザーバー
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2024年6月26日
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2024年6月26日
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クオリティ銘柄は長期保有が肝要 |
何かのマイルストーンや記念日は、過去を振り返り内省するチャンスを与えてくれます。世界の偉大な投資家たちを通じて、深く醸成された私の信念は、お客様が長期的に複利効果を享受するためには、高クオリティに焦点を当てたアクティブ・エクイティ戦略が不可欠であるということです。
30年の投資生活から学んだ10の教訓
1. 優れた企業を選定し、長期的な複利効果を享受する
私たちが、高クオリティ企業がいかなるものかを理解したうえで、ポートフォリオのクオリティを高く維持しようとする投資姿勢が、長期投資家としての視点と相まって、私たちを際立たせているのだと思います。私たちは、営業利益率の変動が小さく、価格決定力があり、借入金が限定的で、長期的に高い投下資本利益率を維持しながら、持続的成長が可能な経営管理の行き届いた企業を求めています。このような特徴を持つ企業を見極めることは極めて重要ですが、同じくらい重要なポイントは、このような本質的に長期的なコンパウンダー企業に複利効果を生む時間を与えることです。私たちは企業を一時的にレンタルするのではなく、長期間所有するのです。
2. 高クオリティ株式で2回勝利する
投資家にとって投資元本の恒久的損失を回避することは、儲けるチャンスと同じくらい重要であることは議論の余地がありません。お客様は私たちが選定した高クオリティ株式に投資することにより、2回勝利することができると考えています。つまり、長期的に素晴らしい複利効果を生む銘柄を保有することでリターンを獲得して勝利し、さらに、市場の下落局面において損失を小さく抑えることで、もう一度勝利することができるでしょう。2回勝利することで、長期的に素晴らしい絶対リターンを得ることができると考えています。
3. 相対的ではなく、絶対的な視点で考える
リスクを重視することは重要なことですが、金融業界においては相対的なリスクを重視し過ぎていると思います。私たちが重視しているのは絶対リスク、つまり投資元本が毀損する可能性であり、ベンチマークに対する相対的なリスクではありません。私たちは、財務上の重要なフランチャイズ・リスク、規制リスク、経営リスク、ESG(環境・社会・ガバナンス)リスク、そしてバリュエーション・リスクを理解することに注力しています。絶対的な観点から考えることで、長期的に勝者(となる銘柄)を発掘できる可能性が高くなり、同様に重要なこととして、敗者を避けることができると考えています。
4. 何を所有しないかは、何を所有するかと同じくらい重要である
特定のセクターや業種は、私たちの高クオリティ銘柄のポートフォリオには適していません。例えば、銀行、公益事業、不動産、エネルギーなどのセクターがそれらに該当します。私たちは30年近くにわたり、クオリティの高い業種の、クオリティの高い銘柄を選定することにより、お客様に魅力的な長期的リターンと、景気サイクルを通じた耐久性を提供してきました。
5. バリュエーションの重要性
私たちは企業のクオリティだけでなく、株価にも「こだわり」を持っています。これを『二重の「こだわり」』と呼んでいます。この「こだわり」が長期的なリターンの原動力となっているのです。かつてチャーリー・マンガーが指摘したように、どんなに素晴らしい企業であったとしても、必要以上に高い株価で購入をしてしまうと、酷い投資になってしまう可能性があります。私たちは、長期的な本源的価値を保守的に見積もり、それを下回る水準で企業を購入し、保有することを目指しています。バリュエーション規律は重要であり、利益よりもフリー・キャッシュフローを重視しています。何故なら、キャッシュは誤魔化しがきかないからです。たとえ現在の株価が高過ぎたとしても、所有したいと思う銘柄の株価のほとんどはやがて自分の思い通りに収斂することを経験から学んでいます。辛抱強く待ちましょう。
6. 経営陣にエンゲージメントを行い、自分の直感を信じる
私たちは、経営陣が会社の経営について、私たちと同じ長期的な展望を持っているかどうか、また、それに応じて資金を配分しているかどうかを理解するため、経営陣にエンゲージメントを行います。私たちはまた、研究開発やブランディング、デジタル・マーケティングなど、長期的な無形資産を経営陣が成長させているか、あるいは育成しているかにも関心があります。経営陣はイノベーションを起こし企業を持続的に成長させることが可能か、資本配分は適切か、といった事項も確認します。多くの報酬制度は、短期的な成果に対して経営陣に報酬のインセンティブを与えますが、こうした制度は、長期的な複利効果にとっては有害な結果をもたらす可能性があります。私たちは、経営陣にどのような企業行動が奨励されているのか、また、経営陣がインセンティブに基づいて行動しているかどうかを把握することに努め、好ましくない報酬制度に対しては変更を促すようにしています。
7. 高クオリティで非対称性を持つポートフォリオは投資家のコア資産として有用である
高クオリティで、市場の上昇局面と下落局面で非対称な特性を持ち、長期的に複利効果が可能な運用戦略は、長期にわたり、力強く安定した投資収益を獲得することが可能になると考えています:例えば、上昇局面で市場に100%追随し、下落局面でそのすべて(場合によってはそれ以上!)を失うよりも、上昇局面で80%追随し、下落局面で50%しか追随しない方がパフォーマンスはよくなります。地道に複利効果を期待する運用戦略は、最近の運用のトレンドに比べると刺激に欠けるかもしれませんが、様々な市場環境を乗り越えた安定性は、投資家のポートフォリオにおいて、魅力的なコア資産としての価値があると思います。また、変動の激しい一部の運用戦略に投資するのと比べ、よく眠れることでしょう。
8. 好奇心を持ち続ける
金融市場は、お客様の投資資金を複利のように増加させるうえで、これまで以上に興味深い市場環境になっています。このビジネスを長く続ける秘訣は、好奇心を持ち続け、学び続け、適切な質問をし続けることだと思います。私は、自分自身を含め(!)あらゆる人物や物事に対して疑問を持つことをチームに奨励し、その好奇心に報いる文化を育てることを学んできました。私たちは幸運にも、最も興味深い業界の一つで働いています。もし市場が投資家の皆様を退屈させるというなら、それは市場の問題というより、むしろ皆様の問題でしょう!自分の仕事が好きで、賢くて、面白い人たちに囲まれることで、好奇心を常に刺激するように努めましょう。
9. 変化に対応していく
ガートルード・スタイン(Gertrude Stein:米国の作家、詩人、美術収集家)は、次のような言葉を残しています。「お金は常にあるが、ポケットは変わる。変わった後はお金は同じポケットには入っていない。」私たちが求めているものは、30年以上前から変わっていません。すなわち、持続可能で長期的に高い投下資本利益率と変動性の低い営業利益率をレバレッジをかけずに実現しながら成長できるビジネスに投資します。しかし、世界が常に変化しているように、こうしたビジネスが存在するセクターや業種も年々変化しています。歴史があり通行料のかかる橋の下を川が流れなくなり、代わりに、川の流れが他の橋に移っていくこともあります。このことを意識し、基本原則や規律を放棄することなく、変化に対応していく必要性を認識しましょう。
10. クオリティ銘柄は長期保有が肝要
チャーリー・マンガーの「大きな利益は売りや買いにあるのではなく、待つことにある」という言葉は、まさにその通りだと思います。私たちの運用手法は、複利効果が期待できる高クオリティ企業を見極めることに重点を置いています。私たちが学んだように、秘訣は、これらの企業が複利効果をあげるまで、十分に忍耐強く持つことです。派手に騒ぐウサギの群れの中で、粘り強いカメになりましょう1。
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インターナショナルエクイティ運用チーム責任者
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