リサーチ・レポート
環境の変化に伴い、絶対リターン投資が新境地を切り開く可能性
|
2024年 アウトルック
|
• |
2023年12月26日
|
2023年12月26日
|
環境の変化に伴い、絶対リターン投資が新境地を切り開く可能性 |
1 | インフレは低下基調にあるものの、水準は中央銀行の目標値を依然として根強く上回り続けており、資産クラス間の価格分散とヘッジファンドのアルファ創出機会を下支えしている。 |
|
2 | 当運用チームは、インフレ、金利、ボラティリティ、分散、そしてアルファ創出機会において、中期的に構造的に異なるレジームを予想する。 |
市場の状況
イールドカーブは金利が「より高く、より長く」維持されることを織り込むなか、中央銀行の緩和サイクルに対する期待が高まっており、当運用チームはこれらの要因が2024年におけるクロスアセットの再評価に影響を与えると予想します。また、債券市場のボラティリティも高まることが見込まれます。このような環境では創造的破壊の力が増幅され、勝者と敗者の格差が根本的に拡大します。証券、セクター、および国レベルでの資産価格の分散が拡大していますが、これはヘッジファンドのアルファ創出や絶対リターンを高めるための要素となります。また、株式と債券との正の相関が高まっていることは、投資家の資産配分において主要なテーマとなっており、ヘッジファンドはオルタナティブ投資の分散手段として改めて重要視されています。
一方、ヘッジファンドのリターン、特にレラティブ・バリューやグローバル・マクロなどでデリバティブを活用する戦略にとって、リスクフリーレートの上昇も力強い追い風となります。これらの戦略は、ポートフォリオにおける現金水準が高い傾向があり、アルファを追求しながら、一定程度市場の実勢金利を獲得することができる可能性があります。さらに、2008年以来初めて、短期の市場金利が株式配当利回りを上回っており、これはロング/ショート株式戦略が恩恵を享受し、空売り環境が改善することも示唆しています。経済および市場の不確実性が高まるにつれ、金利のボラティリティと絶対的な利回りの上昇が顕著化しており、今後もヘッジファンド戦略にとって好都合な分散やアルファ創出の機会をもたらし続けると予想されます。
投資行動・今後の方針
株式では、ファンダメンタルズがリターンをこれまで以上に左右するようになると予想しており、ロングする銘柄とショートする銘柄の選択に優れたアルファ志向のポートフォリオを有望視しています。一方、高水準の利回りと過去20年間で最も低い水準にある株式リスクプレミアムの組み合わせが市場のベータに対して逆風となっているため、ディレクショナルなエクスポージャーに関しては慎重な姿勢で持っています。株式マーケット・ニュートラルなどの絶対リターン戦略を推奨します。
当運用チームは、クレジット・スプレッドが現在の低水準を維持する可能性は低いと考えています。クレジット投資家による方向性への依存度を低減するレラティブ・バリュー戦略は、スプレッドの拡大やボラティリティの上昇からも利益を獲得する公算があります。また、利回りの上昇により、ロング・ポジションを保有するポートフォリオのベースライン・リターンも増加するとみられる一方、利回りが上昇する環境下で企業債務の満期到達が間近に迫っているため、マネジャーは企業の負債管理を活用しようと試みており、イベント・ドリブンの機会セットは拡大する可能性があります。
個別株要因による株価変動が引き起こす市場分散のダイナミクスは、豊富な流動性と相まって、システマティックな運用を行う株式マネジャーにメリットをもたらすと考えられます。同様に当運用チームは、金利に焦点を当てた債券のレラティブ・バリュー戦略を通じ、金利のボラティリティと中央銀行バランスシートの引き締めが引き起こす国債市場の動きから引き続き利益を獲得しています。
今後の注目点
インデックス・レベルでの期待リターンには慎重な姿勢で臨んでいますが、市場での取引が再び活発になれば、株式資本市場、転換社債、M&Aアービトラージなどを活用したアクティブ運用を行うヘッジ付きポートフォリオのプロシクリカルなトレーディング戦略に有利になると予想しています。さらに、世界的な政策金利の顕著な協調的引き上げに続き、インフレ圧力が緩和された場合、クロスボーダー、クロスアセット、クロスインダストリーで利回りやリスクプレミアムの格差が継続する可能性があります。金利のボラティリティが低下すれば、株式、債券、通貨、コモディティ市場などでのブレイクアウト取引といった、より持続的な価格トレンドを活用したディレクショナルなトレードに適した環境が整うかもしれません。
一方で当運用チームは、絶対リターン投資が構造的に異なる時代を迎えつつあると見ており、短期から中期的にインフレ、金利、ボラティリティが新型コロナ以前の水準に完全に回帰することについては懐疑的です。その結果、2024年以降もアルファ創出の機会に富んだ環境となり、ヘッジファンドのリターン獲得に適した状況になると考えています。
|
AIPヘッジファンド運用チーム責任者兼CIO
|
|
AIPヘッジファンド運用チーム、エグゼクティブ・ディレクター
|