リサーチ・レポート
2024年下期の主要テーマ
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Mid-Year
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2024年7月3日
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2024年下期の主要テーマ |
2024年下半期は、金利、インフレ、米国大統領選挙などの影響を受けるだろう。しかし、投資環境全体を見渡せば、債券、株式、オルタナティブ資産に魅力的な投資機会が存在している。今回のThe BEATでは、2024年下半期の重要テーマについて概説する。
1. 財政政策がより支配的に
財政政策が金融政策よりも優位になる可能性が一部の投資家を非常に不安にさせている。なぜならば、金融市場には金融政策の不確実性を織り込むメカニズムが多数備わっているが、財政政策についてはそのようなメカニズムがないからだ。
「財政政策の優位性」は、2024年下半期の最重要テーマである。このテーマは、今後6カ月間で定着し、米国大統領選挙の時期に向けて市場に影響を与えるだろう。また、2025年にかけても、税・歳出に関する財政政策に影響を及ぼすだろう。放漫財政のせいでインフレ期待が不安定化する事態にはまだ至っていないが、今後6カ月から18カ月で、そうなるかどうかが決まるだろう。
2. 米ドル
米国政府の歳出、債務水準、高い利払い、双子の赤字が原因となり、米ドルのバリュエーションや世界の準備通貨としての安定性に関して懸念が生じている。実際、一部の中央銀行は代替となる準備通貨を模索している。また、グローバルなビジネス界では、貿易ブロックを作り、国際取引用の代替的な決済手段を開発しようとしている。
過去50年間について当運用チームが調査したところ、巨額の財政赤字は必ずしもドルの下落につながらないことが判明した。その理由は、米国が貨幣主権、自国通貨に関して強力な制度およびコントロールを有しているからだろう。ドルの価値は、財政赤字以外の要因からも影響を受けるのである。
3. 新興国債券の魅力
新興国債券(EMD)は、インカムの増加、優れた分散効果、リターン向上の可能性をもたらす資産クラスだろう。それにもかかわらず、投資家はEMDをアンダーウェイトしており、おそらく過去に例がないほどのアンダーウェイトになっている。当運用チームは現在のEMDについて、マクロ環境、バリュエーション、投資家の資金フロー、改革の進展を考慮し、魅力的なバリューを獲得できる機会があると考えている。ハードカレンシーおよびローカルカレンシーのセグメントは、特にほとんどの先進国債券市場と比べた場合、魅力的なバリューをアウトライトで提供している。
4. 株式見通し
S&P 500の予想PERは年初の19.7倍から上昇し、現在は20.5倍となっている。いずれの予想PERに基づいた場合でも、2025年の業績予想を採用すると、2024年末のS&P 500は5,000よりも6,000に近くなっている可能性が高い。しかし、過去を見ると、少なくとも年1回は株価が約10%下落している。前回の調整局面は2023年の秋であり、現在は再び調整が起きてもおかしくないタイミングを迎えている。
また、米国大統領選挙で再選を目指す大統領は、多額の財政支出で経済を刺激しようとするため、通常は株式にとって良い年となる。それは、当運用チームが選好するセクターに直接的な影響を及ぼす。インフラ法は資本財や素材セクターに恩恵をもたらし、CHIPS法は半導体・半導体製造装置関連の銘柄を支えるだろう。
5. バンクローンおよびCLO
バンクローンおよびローン担保証券(CLO)の利回りは現在、コア債券市場の2倍に達しており、株式市場の長期的なリターンとほぼ同等である。ローンは構造の点で債券とは対照的であるため(デュレーションなし、変動利率)、次のような幅広い用途でポートフォリオを補完できる:投資適格債よりも高いクーポンを獲得する、プライベートクレジットよりも規模が大きく流動性の高い企業に投資する、60/40ポートフォリオよりも相対的に割安に取引する。
当運用チームは、今後のクレジット市場は晴天に恵まれると考えているが、もし雨が降り始めた場合、ローンはポートフォリオの傘の役割を果たせるだろう。雨が降らなかった場合でも、傘は晴れたビーチで過ごす邪魔にはならない。
6. オルタナティブ投資
オルタナティブ投資は、市場バリュエーションやリターン創出の可能性という点において、好ましい変革が続いている。契機は、2022年の金利環境の急激な変化だった。このような市況の大きな変化からいち早く恩恵を受けたのはプライベートクレジットであり、ヘッジファンド分野においても早期にパフォーマンスが改善した。また、この変革の進展により、現在ではオルタナティブエクイティ市場(プライベートエクイティや不動産を含む)においても、優れた投資機会が生じていると当運用チームは考えている。