リサーチ・レポート
2024年の重要テーマ7選(マルチアセット)
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2024年アウトルック
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2024年1月23日
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2024年1月23日
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2024年の重要テーマ7選(マルチアセット) |
2024年年初の投資環境は、2023年年初とは大きく異なっている。インフレはピークアウトしたと見られ、金利も低下していく可能性が高い。バランスのとれたポートフォリオが再び有効に機能するだろう。ポートフォリオ・ソリューション・グループのキャピタル・マーケッツ・グループ(以下、「当グループ」とします) が2024年の重要テーマと考えている7項目について、以下でご紹介する。
2024年のコンセンサス予想は的中するだろうか? これは含みのある質問である。なぜなら、経済ファンダメンタルズと資産パフォーマンスに関する多くのコンセンサス予想は、過去2年間にわたり大きく間違っていたからである。しかし、2024年は初期条件が2023年とは全く異なるなど、状況は違う。その結果、コンセンサス予想が的中する確率はやや高まっているだろう。当グループはこのような状況を考慮し、株式についてはニュートラルからオーバーウェイト、そして、デュレーションのアンダーウェイトを解消し、ポートフォリオ全体としてよりニュートラルにしていく。それらのポジションの資金については、ショートデュレーションとキャッシュ保有額を削減することによって賄う。
2. 株式と債券の相関
株式と債券には強い負の相関関係があり、世界金融危機(2008~09年)以降、バランスのとれたポートフォリオ(60/40)の魅力的なリスク・リターン・プロファイルを生み出す源泉となっていた。しかし、このような状況は2020年のコロナ禍によって一変した。正の相関関係が急激に強まり、債券の分散効果は低下した。債券と株式が共に下落した2022年は、マルチ・アセット運用にとって、特に厳しい状況となった。2023年も債券にとって難しい年だったが、2024年についてはグローバル債券の年初のバリュエーションは魅力的である。当グループは、株式と債券の相関は2024年に低下すると予想している。これはバランスのとれたポートフォリオにとって極めて重要な点と言える。
3. 金融政策
2023年年初の重要な論点は、金融政策の引締めによって経済がリセッション入りするか否かだった。結局リセッション入りすることはなく、2023年の大半を通して、米国の経済成長の底堅さとアップサイドのサプライズが大きなテーマとなった。それでも、2024年年初のリスクに関する主な論点は、まだ金融政策の影響である。当グループは、ダウンサイドリスクはあるものの、経済成長に対する逆風は弱まっていると考えている。ディスインフレが穏やかに進み続けた場合、経済成長に関するリスクはさらに低下するだろう。
4. インフレ
コロナ禍が引き起こした一時的な需給ショックが弱まることから、米国のインフレ率はおそらく今後12カ月間に大きく低下するだろう。実際、消費者物価指数(CPI)バスケットの主要項目はすべて、コロナ禍関連の深刻なショックに直面していた。しかし、現在ではその影響は急速に逆転している。当グループは、足元では前年比+3.5%程度となっている米国のコア個人消費支出(PCE)について、2024年末までにコンセンサス予想(前年比+2.6%)を下回る水準に低下すると予想している。
当グループは、ユーロ圏の急速なディスインフレも予想しているが、その根拠は米国と異なる。米国と比較すると、ユーロ圏には経済の過熱によるインフレ圧力を示すエビデンスは少ない。むしろ、ユーロ圏におけるコアインフレへの上昇圧力は主に外部から生じたと考えられる。「輸入された」インフレは、2022年のエネルギーショックによって悪化した。これらの力が弱まるか、逆転し、インフレ率は前年比+2.0%に低下すると当グループは予想している。
5. 日本株
2023年、日本株は再び投資家から大きな注目を集めた。2024年における最も重要な問いは、日本株の最近のアウトパフォーマンスが持続可能かどうかだろう。市場は現在、日本株の復活を示しており、当グループも中期的にはポジティブな見通しを持っているが、必ずしも順調な上げ相場とはならない可能性も認識している。現在のバリュエーションは長期の中央値並みであり、利益成長がトータルリターンの重要なドライバーになるだろう。当グループは2024年の日本株について楽観的であるが、注視すべきリスクも存在していると考える。
6. 中国
政府の短期的な支援策、割安なバリュエーション、軽いポジショニングが要因となり、2024年には中国株が一時的に反発する可能性がある。ただし、構造的な問題は根深いため、投資家の一時的な反発に対する反応は薄いかもしれない。中国の家計の富のおよそ70%が不動産価格に結びついており、2024年以降は不動産問題が中国経済への逆風となる可能性が高い。さらに、多くの投資家にとって、中国の政治リスクプレミアムはあまりにも高いだろう。
7. オルタナティブ:プライベート・マーケット
プライベート・マーケットは過去3年間、一連の混乱を経験した。資産価格はピークアウトし、世界金融危機以降なかった規模の調整が始まっている。そのため、多くのプライベート・マーケット参加者は、コミットメント(投資家がプライベート・マーケットのファンドに約束する金額など)を減らすか、すべて休止するという対応をとってきた。こうした一連の動きのため、プライベート・マーケットでは世界金融危機以来初めての業界全体での価格調整が生じており、投資家はそれから生じる機会とリスクを見極めようとしている。
プライベート・マーケットを3つの分野(①すでに大きく価格調整が進んだ市場、②価格調整がある程度起こり、維持可能な水準にある市場、③バリュエーションが引き続き軟化する見込みの市場)に分類し評価したところ、当グループは、すべての市場において、2024年に機会が生じると考えている。