リサーチ・レポート
2024年の熾烈な綱引き
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2024年 アウトルック
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2023年12月27日
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2023年12月27日
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2024年の熾烈な綱引き |
1 | 利回り上昇、低水準の新規発行、そして底堅いクレジット・ファンダメンタルズが、地方債への資金流入といったフローの反転を促す要因になる可能性があります。 |
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2 | 金利サイクルに関する現状を考えれば、質が高くデュレーションの長い債券のポジションを取ることが有効と言えるでしょう。 |
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3 | 利回りがイールドカーブ全般で大幅に低下するとの予想は、インフレ・データの鈍化とFRB(連邦準備制度理事会)の更なる抑制が前提となるでしょう。 |
市場の状況
ここ数週間、市場は、FRBが経済のファンダメンタルズと膨らみ続ける米国の財政赤字を賄うために必要な米国債発行の間の綱引きでバランスを取ることができるか注目してきました。
利回りはイールドカーブ全般にわたって10数年ぶりの高水準にあり、バリュエーションも魅力的に見えます。この組み合わせは、2024年に地方債への純資金流入を促進する起爆剤になる可能性があります。また、2024年第1四半期に新規発行額が大幅に増加しない限り、資金フローがマイナスからプラスに転じれば、年明け早々に地方債のバリュエーションを一気に押し上げる可能性があります。
地方債のイールドカーブの形状がユニークであることから、デュレーションを長期化することで、短期ゾーンよりも利回りを引き上げることが可能ですが、このことは米国債市場では不可能でしょう。
11月28日現在、ブルームバーグ地方債インデックスの利回りは3.73%であり、税引後ベースでは他の資産クラスと比較して地方債は魅力的であると考えています1 。連邦税の最高税率を40.8%(ネット投資インカムに対する課税を含む)と仮定すると、地方債インデックスの利回りは6.30%です。これに対しブルームバーグ米国社債インデックスの利回りは5.66%です。
投資行動・今後の方針
質の高いデュレーションについては、2024年に向けて中立からオーバーウェイトのポジションを維持しています。2022年と2023年のクレジットのデュレーションが全般的にアンダーパフォーマンスとなったこと、2024年に米国経済が減速する可能性があることを考慮し、私たちは質が高く、デュレーションが長期の資産が上昇することを想定してポートフォリオを幅広く構成しています。
このような「質への逃避」が進む環境下で投資機会を見出すことができるセクターのうち、質の高い一般財源債や特定の税金を返済手段とするもの、上下水道システムなどの必要不可欠なサービスのセクターがアウトパフォームする可能性があると考えています。
地方債のイールドカーブの短期ゾーンの利回りが高止まりして、中期ゾーンが逆イールド化、長期ゾーンがスティープ化している状態であることから、バーベル・アプローチが地方債における魅力的な投資方法であると考えています。
質の高いヘルスケア債と空港債はいずれもスプレッドが魅力的であり、投資家に投資機会を提供しています。高等教育セクターでは、より質の高い発行体への配分を高めています。このセクターでは、良好な信用ファンダメンタルズとブランド認知度の高い発行体が、中期的に勝者になると考えています。
今後の注目点
私たちのベース・シナリオでは、1年後には利回りが大幅に低下していると見ているものの、FRBがタカ派色を後退させインフレ・データが鈍化することを前提とした見通しです。しかし、インフレが粘着性を維持し、雇用が引き続き堅調であれば、利上げがさらに進む可能性があります。
最大の課題は、債券全体で、予想外の金利変動に対応することです。地方債市場のテクニカル要因は2024年にプラスに働くことを確信しているものの、FRBの政策に左右される金利の不確実性を考えると、明らかにリスクがあると言えるでしょう。
地政学的リスクも無視できません。ウクライナや中東での紛争が世界のエネルギー市場に難題を投げかけ、干ばつがパナマ運河やその他の主要な水路経由の海運に影響を与える中、インフレ圧力がさらに顕在化する可能性があります。
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地方債共同責任者、ポートフォリオ・マネジャー
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地方債共同責任者、ポートフォリオ・マネジャー
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