リサーチ・レポート
高クオリティ株で熱狂期を乗り切る
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2024年 アウトルック
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2024年1月10日
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2024年1月10日
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高クオリティ株で熱狂期を乗り切る |
1 | MSCIワールド指数の現時点における予想PER(株価収益率)は、特に2024年の二桁の利益成長という、間違いなく楽観的な想定に基づいており、割安感はありません。私たちの見解では、業績悪化の可能性は今日の業績予想にも現在の市場PERにも反映されていません。 |
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2 | 私たちは、収益の底堅さを備えた高クオリティ企業を妥当な株価で探し出すことに焦点を当て、潜在的に有害な投機的バブルに巻き込まれないようにすることで、資本が永続的に失われてしまうことを回避しようと努めています。 |
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3 | 「マグニフィセント・セブン」銘柄以外に目を向けると、生成型人工知能(生成AI)やAI全般で、恩恵が現れるまでに時間のかかるものの、大きな可能性を秘めた「スロー・バーナー」と呼ばれる企業群が存在すると考えられます。生成AIモデルを採用するこれらの企業は、「ウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭園:自社サービス内に極力ユーザーをとどまらせる手法)」によって、顧客に価値を創出したり、コストを削減したりすることができると私たちは考えています。 |
市場の状況
過去数年間、株価の下落または上昇はPERの変動によるものであり、PERの上昇または下落がリターンを左右してきた一方で、利益(EPS、一株当たり利益)は概ね横ばいで推移しています。利益率は、コロナ禍のピーク時に近い高水準を維持しており、収益のリスク要因となっています。
債券利回りの上昇は株式市場に懸念をもたらします。既に多額の債務を抱えたシステムは、より高コストになった借り入れに対応することが可能なのでしょうか? また重要な点として、利回り上昇は株式と債券の相対的な評価と魅力にどのような影響を及ぼすのでしょうか? 市場収益率とリスク・フリーとされている米国債利回りとの差は20年ぶりの低水準にあります。
仮に債券という選択肢を無視したとしても、MSCIワールド指数の予想PERは割安感に乏しい状態にあります。特に2024年については楽観的な二桁の増益予想に基づいているため、なおさらです。私たちは、現在の市場の業績予想、および現時点の市場PERには業績悪化の可能性が反映されていないと見ています。
景気減速が起きた場合、高いEPSおよび高いPERの銘柄は脆弱な状態に陥りやすい点を考慮すると、高クオリティ銘柄は安全な避難所であると私たちは考えます。非常に高いクオリティ、すなわち、ブランド、ライセンス、ネットワークといった強力な無形資産を保有し、優れた経営陣によって経営されている企業は、景気後退局面でも顧客基盤と利益率を維持することが可能なはずです。過去の経験を振り返っても、このような収益が底堅い企業は、長期的に高いパフォーマンスを上げてきました。
投資行動
私たち運用チームの投資プロセスは、マクロ経済の特定の視点から始めるのではなく、世界有数の企業のファンダメンタルズにボトムアップで焦点を当てています。
私たちは、株式投資で損失を被るには2種類あると考えています。EPSの低下か、PERの低下です。私たちは、収益の底堅さを備えた高クオリティ企業を妥当な株価で探し出すことに焦点を当て、潜在的に有害な投機的バブルに巻き込まれないようにすることで、資本が永続的に失われてしまうことを回避しようと努めています。
歴史的に見て、このような規律は、私たちの顧客にとって有益なものとなりました。チャーリー・マンガー(Charlie Munger)が示したように、適切なバリュエーション水準で素晴らしい企業に焦点を絞ることは、割安あるいは魅力あるバリュエーション水準にある妥当な(それなりの)企業に絞るよりも、一般的により多くの報酬を手にしやすい道です。
市場の二極化がますます進行する中、特に大きな打撃を受けたライフサイエンス業界や生活必需品セクターで、タイミングを見計らいながらいくつかの銘柄をポートフォリオに組み入れることが出来ました。新型コロナ関連の在庫処分やバイオテクノロジー顧客からの需要低下(特に米国と中国で顕著)に伴い、特定のライフサイエンス銘柄のバリュエーションは急激に圧縮されました。また、生活必需品セクターは、モメンタム主導の株式市場の上昇に遅れを取っています。一方で、ポートフォリオ内の一部の「よりグロース色が濃い株式」、とりわけAIから直接的な恩恵を受ける銘柄の割高度合いが高まったことにより、保有銘柄の一部売却を行いました。
今後の注目点
生成AIの潜在的利益に対する市場の熱狂が依然として続いています。これまでのところ、この熱狂は、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる少数の銘柄に集中しており、これらの銘柄の将来の予想利益は、高水準に急上昇しています。
一方で、生成AIや一般的なAIの恩恵が現れるまでには時間のかかるものの、大きな可能性を秘めた「スロー・バーナー」と呼ばれる企業群が存在すると私たちは考えています。生成AIモデルを採用するこれらの企業は、「ウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭園)」によって、顧客に価値を創出したり、コストを削減したりすることができると私たちは考えています。重要な点は、価格決定力を持つ事の結果として、株主のための十分な利益を適切に維持できるという点です。
AIがもたらす影響の全容がまだ不透明な中、収益期待が高いということは、現在の市場の高揚感が薄れた場合、あるいは実際に収益期待が達成されなかった場合、バリュエーションのリスク要因となり得ます。短期的な要素、例えば翌四半期の業績や1株当たり利益(EPS)成長を過度に重視することが市場では頻繁に起きるため、株価が企業の長期的な本源的価値を反映できていない場合がある点に留意し続けることが賢明です。私たちは、長期的に持続的かつ高い投下資本利益率で安定的に成長できる、適切な価格の高クオリティ企業に焦点を当てることで、この収益リスクを管理することを目指しています。
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インターナショナル・エクイティ運用チーム 責任者
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インターナショナル・エクイティ運用チーム
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